" 『後宮小説』にあって『宇宙のみなもとの滝』にないもの、それは淡い哀しみをおびた「軽さ」である。この「軽さ」は軽薄短小の「軽さ」ではなく、重力から逃れてあることの「軽さ」だ。『後宮小説』の世界では、登場人物もそこで起る重要なあるいはどうでもいいような事件の数々もそれらを包みこんで流れる歴史もそしてそのすべてを語る声もその一切が重力の軛を逃れて浮遊している。この「軽さ」は内閉的な夢を語ることによってではなく、ついに重力から逃れることのできない我々人間というやっかいな存在の運命を直視することによってしか得ることのできない宝物なのだ。我々はこの稀な宝物のことを「ファンタジー」と呼んできたのである。"